長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第45回は、多くのモデルが夏期にモデルチェンジを行う炊飯器について取り上げる。そろそろ新米が出回り、おいしいご飯が食べられるこの時期に、お買い得になった型落ちモデルを賢く購入しよう。
モデルチェンジ後で型落ちモデルが買い時な今、4万円以下の圧力IH炊飯器が人気
炊飯器市場が盛り上がるのは、やはり新米が市場に出回る秋から冬にかけての時期。ということで、各メーカーともこの時期に合わせるように、6~9月くらいの時期に最新モデルを発売するのが通例となっている。今年も主要なメーカーすべてから最新モデルが発売され、年末に向けて市場全体が盛り上がっていくことが予想される。
【図1】価格.com「炊飯器」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3年)
図1は、価格.com「炊飯器」カテゴリーの過去3年間における閲覧者数推移を示したもの。この3年間で見ると、徐々に閲覧者数が減ってきているようにも見えるが、これは、2020年に始まったコロナ禍での需要先食いの影響と見ていいだろう。この3年の動きだけを見ても、炊飯器の需要が高まるのは9月くらいの秋口から年末年始の時期ということが見て取れる。逆に春以降の時期は需要が下がり、やがて夏の時期にモデルチェンジを迎えるという、非常にわかりやすい商品サイクルとも言える。
【図2】価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける価格帯別の売れ筋製品割合(2024年8月時点)
では、最近はどのような炊飯器が人気なのだろうか。図2は、価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける価格帯別の売れ筋製品の割合を示したものだが、これを見ると、1万円台、2万円台、3万円台といった価格帯がいずれも2割近い割合となっており、4万円以下の製品が全体の6割以上を占める状況であることがわかる。現在の炊飯器の主戦場は主にこのあたりの低価格帯となっており、炊飯器のグレードでいうと、エントリー~中級モデルくらいまでがこの価格帯に入る。逆に、一時期もてはやされた高級炊飯器も、7万円以上の製品の割合が約15%とそれなりにあるように、一定の支持は得ているようだ。逆に、その間の4万~7万円という、以前であれば中級モデルが属していた価格帯はやや人気が低い。炊飯器の世界においても、ある程度の二極化は進んでいるように見受けられる。
【図3】価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける炊飯方式別の売れ筋製品割合(2024年8月時点)
かわって今度は、炊飯方式について見てみよう。図3は、価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける炊飯方式別の売れ筋製品の割合を示したものだが、これを見ると、圧力IH炊飯器が圧倒的に多く、全体の約65%を占める。続くIH炊飯器が約25.5%で、マイコン方式となると約8%しかない。この結果を図2の結果と組み合わせて考えると、今売れている炊飯器というのは、3万円以下の安めの製品でもIH方式、3~4万円程度の中級モデルでも圧力IH方式を採用しているモデルが多いことがわかってくる。この人気の圧力IH方式だが、IHヒーターによるムラの少ない高火力と、内釜に圧力をかけることで高まった沸点によって、お米の芯まで短時間でやわらかく炊き上げられるのが特徴。構造も比較的簡単なので、比較的製品価格も安くでき、人気の中心となっている。
ちなみに、価格が高めのいわゆる高級炊飯器も、この圧力IH方式を採用しているものがほとんどだが、これらの製品の価格が高いのは、主に内釜などに採用される素材が大きく影響している。低価格の圧力IH炊飯器の場合、内釜は大抵ステンレス製だが、高級炊飯器の場合は、鋳造鉄や銅、土鍋などの本格素材が使われており、これが価格を押し上げる主な要因となっている。もちろん、こうした素材でできた内釜を採用する高級炊飯器の炊き上がりにはそれなりのものはあるが、最近では低価格の圧力IH炊飯器でも、火力コントロールや圧力コントロールの精度が上がったことで、以前よりもおいしく炊けるようになったという意見が多く、こうした細かな技術改良も、低価格モデルの人気を押し上げる一因となっている。
圧倒的な人気を誇る象印。その理由はラインアップの豊富さと価格も含めた購入満足度の高さ
【図4】価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける主要メーカー別の売れ筋製品割合(2024年8月時点)
炊飯器は国内のさまざまなメーカーが製品を投入しているが、人気のメーカーはどのようになっているのだろうか。図4は、価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける主要メーカー別の売れ筋製品割合を示したもの。これを見ると、象印が圧倒的な人気で全体の約45%を占めているのが特徴的。次いでタイガー魔法瓶が約18.5%、パナソニックが約11.6%となっており、この3社だけで全体の4分の3ほどを占めている。東芝、日立、三菱電機といった古参メーカーについては数%のシェアにとどまっており、象印の強さが際立っている。
【図5】価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける主要メーカーごとの閲覧者数推移(過去3年)
このメーカーシェアの動きを過去3年にわたって示したものが図5だ。こちらを見ても、象印が圧倒的に強く、ライバルのタイガー魔法瓶が時おりこれに迫るものの、その優位はゆるがない。単独3位のパナソニックはこの3年でややシェアを落としており、その下の東芝、日立、三菱電機の3社は混戦状態で4位グループを形成しているといった状況だ。
しかし、どうして価格.com上では、ここまで象印の人気が高いのか。その理由は、製品ラインアップの豊富さと、価格の安さも含めた満足度の高さにあると言える。価格.comの「炊飯器」カテゴリーに掲載されている製品数(2024年9月3日時点)は、象印が102とトップで、次いでタイガー魔法瓶の91が多く、そのほかのメーカーとなると、ほぼ40以下という状況で、象印とタイガー魔法瓶の2社の多さが際立っている。
これを3万円以下の製品で見ると、象印が50に対して、タイガー魔法瓶が40と、その差はさらに広がる。さらに、ユーザー評価3.5以上の製品にして絞り込むと、象印が34に対してタイガー魔法瓶が19となり、象印は低価格帯モデルでも一定の評価を得ている製品が多いということがわかってくる。逆に7万円以上の高級炊飯器で、同じようにユーザー評価3.5以上の製品を絞り込むと、象印は9で、製品数が1~3しかない他メーカーを圧倒している。
このラインアップの豊富さと、販売価格も含めた購入満足度の高さが、象印製品の評価の高さにつながっていると見てよさそうだ。
コレ買っときゃ間違いない! 価格.com編集長が今注目する炊飯器5選
※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2024年9月3日 時点のものです。
象印「炎舞炊き NW-PV10」
価格.com最安価格:59,480円
発売日:2023年7月下旬発売
ユーザー満足度・評価:★4.39(18人)
象印の高級炊飯器ブランド「炎舞炊き」。本モデルは、その中でも価格を安めに抑えた2023年発売の下位モデル。上位モデル「炎舞炊き NW-FB10」との性能差はそれほど大きくないが、価格的には半額近く安く買えるとあって、お買い得度は高い。高級炊飯器ではあるが、他メーカーのように凝りまくった内釜を使うことなく、鉄(くろがね)仕込みのアルミ+ステンレス釜を採用。底面に設置された4つのIHヒーターとの組み合わせで、お米の対流をうながし、ふっくらおいしいご飯を炊き上げられると評判だ。炊飯後のアンケートに回答していくことで、自分好みの炊き方に近づけていく「わが家炊き」も搭載。お手入れのしやすさにも配慮されている。
タイガー魔法瓶「土鍋ご泡火炊き JRX-T100」
価格.com最安価格:71,095円
発売日:2023年7月21日発売
ユーザー満足度・評価:★4.61(38人)
タイガー魔法瓶が創立100周年を記念して作り上げた、高級炊飯器の特別モデル、それが「土鍋ご泡火炊き」だ。注目すべきは、製品名にもある本格的な土鍋「萬古焼(ばんこやき)」を内釜に採用した点。蓄熱性にすぐれた土鍋の性質を最大限に生かすような大火力と火力制御によって、お米ひと粒ひと粒の甘みを引き出し、弾力ある仕上がりにしてくれるという。70種類のお米の銘柄に適した炊飯プログラムを搭載し、銘柄別の炊き分けも可能。少量だけ炊飯してもおいしい「一号料亭炊き」や、保温してもおいしい「おひつ保温」などの機能も好評だ。
三菱電機「本炭釜 紬 NJ-BW10F」
価格.com最安価格:64,500円
発売日:2023年5月21日発売
ユーザー満足度・評価:★5.00(7人)
高級炊飯器という製品ジャンルを確立した三菱電機の2023年モデル。高級炊飯器の中では唯一、圧力制御を採用せず、IHヒーターと火力制御のみで、しゃっきりめのご飯をおいしく炊き上げる。その秘密は「炭」を練り込んだ内釜「本炭釜」にある。熱伝導性が高く、IHヒーターとの相性がいい炭により、お米に素早く熱を届けて吸水させ、さらに炭の遠赤外線効果によってうまみを凝縮。あえて圧力機能を使わないことで、ひと粒ひと粒が粒立ったしゃっきりおいしいご飯が炊き上がる。本体もコンパクトでお手入れもしやすく、全体的なバランスのいい一台だ。
パナソニック「SR-CR10A-K」
価格.com最安価格:26,455円
発売日:2023年9月1日発売
ユーザー満足度・評価:★4.48(11人)
パナソニックの圧力IH炊飯器。3万円以下で購入でき、圧力IHとしては高コスパなのが目を引く。コンパクトなボディながら、上位シリーズ「おどり炊き」ゆずりの「ダイヤモンド竈(かまど)釜」を内釜に採用。1.1気圧の圧力で102度まで沸点を高め、遠赤効果で米のひと粒ひと粒までしっかり熱を伝えるため、しゃっきりめのおいしい炊き上がりを実現する。さまざまな自動調理機能も搭載し、多用途に使えるのも魅力だ。
象印「極め炊き NW-VE10」
価格.com最安価格:17,700円
発売日:2023年9月1日発売
ユーザー満足度・評価:★4.43(14人)
象印の低価格シリーズ「極め炊き」のIH炊飯器。圧力機能は非搭載ながら、強火で炊き続け、うまみを引き出す「豪熱沸とうIH」の搭載などにより、ふっくらおいしいご飯が炊き上がる。好みに合わせて3段階に炊き分けられる「白米炊き分け3コース」を搭載するほか、最大30時間までおいしく保温できる「うるつや保温」などの便利機能も備える。2万円以下で購入できるコストパフォーマンスの高さも人気の理由だ。
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