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AV家電 「ミライスピーカー・ミニ」はプレゼントに最適? 真剣に検証してみた
「ミライスピーカー・ミニ」の効果を従来モデル「ミライスピーカー」との比較も含めて検証していく

「ミライスピーカー・ミニ」の効果を従来モデル「ミライスピーカー」との比較も含めて検証していく

高齢者など、音の聞こえづらい人をターゲットに、テレビの音を聞こえやすくするスピーカーとして訴求されている「ミライスピーカー」をご存じだろうか。母の日や父の日、敬老の日などのプレゼントとして人気があるという。以前、この製品がとても気になってオーディオ製品としての特徴を真剣にレビューしたことがあった。

結果としてわかったのは、「ミライスピーカー」は……

●テレビの「音質向上」のために選ぶ製品ではない
●シンプルで誰にとってもとても使いやすい
●広いエリアに音が届く”オンリーワン”の魅力がある

ということ。基本的な技術についてもインタビューしているので、気になった人は以下関連記事をご覧いただきたい。

ここでもう一度「ミライスピーカー」を取り上げる理由は、製品がリニューアルされ「ミライスピーカー・ミニ」として発売されたから。メーカー希望小売価格は19,800円(税込)。このリニューアルのされ方がちょっとイレギュラーで、品質をそのままに「値下げ」しているのだ。

これはAV機器としては大変珍しいパターンだと言える。さまざまな音響技術に関する工夫と企業努力とで実現した値下げのようだが、実際に品質は変わっていないのだろうか? 本当にプレゼントによい製品なのか? 今回のレビューの主眼はその検証だ。

「ミライスピーカー」は人の声の「聞き取りやすさ」に特化している

製品の詳細は上記の関連記事をご覧いただくとして、「ミライスピーカー・ミニ」の概要を簡単に確認しておこう。

冒頭のとおり、「ミライスピーカー」シリーズはテレビの音の聞き取りやすさに特化した製品だ。アンプを内蔵したアクティブスピーカーで、入力端子は3.5mmステレオミニプラグによるアナログ音声入力1系統のみ。テレビのヘッドホン出力とつないで、基本的には1本で使うことになる。電源さえ入れれば音が出るし、「ミライスピーカー」の電源は入れっぱなしでOK。

本体にある端子は電源と1系統のアナログ音声入力(3.5mmステレオミニ)だけ。テレビとの接続用ケーブルは付属しているので、特別な準備は不要だ

本体にある端子は電源と1系統のアナログ音声入力(3.5mmステレオミニ)だけ。テレビとの接続用ケーブルは付属しているので、特別な準備は不要だ

付属ケーブルの片方はテレビのヘッドホン出力(写真では「音声出力」と表記されている)に接続する

付属ケーブルの片方はテレビのヘッドホン出力(写真では「音声出力」と表記されている)に接続する

このシンプルな構成を物足りなく思う人もいそうだが、誰にでも簡単に使える割り切った設計だと言える。現在はテレビにヘッドホン出力がない場合もあるので、組み合わせたいテレビにヘッドホン出力があるかどうかだけは確認しておきたい

「聞き取りやすさ」のための主要技術が独自の「曲面サウンド」ということは以前の記事で説明したとおり。一般的なダイナミック型ユニットとフィルムのような曲面振動板が一体になったハイブリッド構造となっている。原理は以下の動画がわかりやすいだろう。

この「曲面サウンド」で、人の声の帯域を「聞き取りやすく」(強調する)ことと、部屋のどこにいても音が届くリスニングエリアの広さを実現しているという

図の中央がダイナミック型ドライバーと曲面振動板によるハイブリッド式ユニット

図の中央がダイナミック型ドライバーと曲面振動板によるハイブリッド式ユニット

曲面振動板のメリットは、一般的なスピーカーユニットよりも広い範囲に音を放射できること。部屋のどこにいても同じように聞こえるよう、テレビの音を拡散するのだ

曲面振動板のメリットは、一般的なスピーカーユニットよりも広い範囲に音を放射できること。部屋のどこにいても同じように聞こえるよう、テレビの音を拡散するのだ

前回の「ミライスピーカー」レビュー記事でも実際に感じたように、この構造は音質のためではない。初めから低音の再生は諦めた、人の声の帯域にフォーカスした作りなのだ。それが「ミライスピーカー」が「聞き取りやすさ」特化型スピーカーであることの由縁だ。

なお、この「聞き取りやすさ」とはあくまで実証実験の結果であり、科学的に原理が解明されたものではないことも従来どおり。

ちょっと大きくなった「ミライスピーカー・ミニ」は音もちょっと違う

「ミライスピーカー・ミニ」(左)のサイズは90(幅)×200(奥行)×154(高さ)mm、「ミライスピーカー」(右)のサイズは86(幅)×212(奥行)×143(高さ)mm。奥行き以外は「ミライスピーカー・ミニ」のほうがむしろ大きい

「ミライスピーカー・ミニ」(左)のサイズは90(幅)×200(奥行)×154(高さ)mm、「ミライスピーカー」(右)のサイズは86(幅)×212(奥行)×143(高さ)mm。奥行き以外は「ミライスピーカー・ミニ」のほうがむしろ大きい

さて、ここから「ミライスピーカー」と「ミライスピーカー・ミニ」を実際に比較していこう。すぐわかるのは、形状が異なること。新製品は「ミニ」と名乗りつつ、実は従来モデルよりも大きくなっているくらいだ。また、曲面ユニットの色が白から黒へ変更されている。これは「ミライスピーカー・ステレオ」で開発された黒の曲面ユニットを応用したのだろう。同じ特性を持たせつつ、黒く着色するのに苦労したそうだ。

あくまで推測だが、ユニット保護用のパンチングメタルを曲げ加工しないシンプルな形状にしたことがコストダウンに効いているのではないか。その代わりに「ミライスピーカー・ミニ」にはエンクロージャーのサイドに穴(スリット)の加工も施されている。このほか、音量調整用のノブもシンプルな形状に変更されている。

左の「ミライスピーカー・ミニ」では、ユニットを保護するパンチングメタルの形状がシンプルになっている

左の「ミライスピーカー・ミニ」では、ユニットを保護するパンチングメタルの形状がシンプルになっている

開口率の調整か、「ミライスピーカー・ミニ」の横にはスリットのような穴が空けられている

開口率の調整か、「ミライスピーカー・ミニ」の横にはスリットのような穴が空けられている

とはいえ、基本的な使い方はまったく変わらない。スピーカー本体の音量を4~6割として、あとはテレビのリモコンで(テレビの)音量を調整する。ここでは、「聞き取りやすさ」にフォーカスして両機の音を比べてみる。

「ミライスピーカー・ミニ」(と「ミライスピーカー」)本体の音量は4~6割程度に固定し、あとはテレビで音量を調整する

「ミライスピーカー・ミニ」(と「ミライスピーカー」)本体の音量は4~6割程度に固定し、あとはテレビで音量を調整する

部屋中に音を届けてくれるメリットは共通

「ミライスピーカー」も「ミライスピーカー・ミニ」も、かなり特徴的な音だ。以前のレビューでも感じたように、ハイファイオーディオ的観点で言えば低音の出ていない「上ずった音」と評されてしまうだろう。

しかし、これがあえての狙いなのだ。人の声の聞き取りやすさだけを考えればその目的には確かにかなっているし、フレコミのとおり、聞く場所を問わず、音をしっかり届けてくれている。部屋中に音を広げる無指向性スピーカーと同じような感覚で使える、これがこのスピーカーのよいところだ。

そういう特徴は共通しているが、筆者がニュースやドラマなどのテレビ放送番組を真剣に聞く限り、両機の音は確かに違う。「ミライスピーカー・ミニ」のほうが一般的なスピーカー寄りのバランスというか、「上ずった」印象がやや薄め。価格を落としたこちらのほうが望ましいのではないかと思った。これはキャビネットが少し大きくなったこととも関連しているのかもしれない。

高齢者は「ミライスピーカー・ミニ」をどう聞いたか?

「ミライスピーカー・ミニ」

「ミライスピーカー・ミニ」

ここからも前回のレビュー同様、齢74を迎え、テレビ内蔵スピーカーの音が聞きづらいという母に「ミライスピーカー」と「ミライスピーカー・ミニ」を聞き比べてもらった。

再生したのは再放送していたドラマ「孤独のグルメ」。するとやはりというか、感想は前回のレビュー時とまったく同じ。

●普段実家で使っているテレビの内蔵スピーカーよりも聞き取りやすい
●「聞こえ方」がまったく違って感じられる
という内容だ。

実家のテレビは10年以上前の東芝のエントリーシリーズ。スピーカーにそれほどコストのかかっていないだろうテレビとの組み合わせでは「聞き取りやすさ」が増したようだ。これは「健聴者」である筆者も同感。この点も従来どおりだった。

「聞こえ方」の指摘についても同様で、セリフが“浮いた”ように聞こえるため、吹き替え版の映画を見ているようだとのこと。“浮いている”という表現が適当かどうかはわからないが、セリフが目立っていることには違いなく、「聞き取りやすさ」には貢献しているようだ。

ちなみに「ミライスピーカー」と「ミライスピーカー・ミニ」で差を感じるか? という質問については答えに困っていた。どちらも同じように感じられたということのようだ。

「ミライスピーカー・ステレオ」はどうなの?

「ミライスピーカー・ミニ」を横にして2つ並べたような形の「ミライスピーカー・ステレオ」

「ミライスピーカー・ミニ」を横にして2つ並べたような形の「ミライスピーカー・ステレオ」

「ミライスピーカー・ミニ」は本当に従来品と品質が変わらない……というだけでは面白くないので、同時に借用していた「ミライスピーカー・ステレオ」も母に試してもらうことにした。「ミライスピーカー・ステレオ」はステレオ(2ch)仕様のサウンドバータイプの製品。ステレオ化されただけでなく、光デジタルでの音声入力と本体のリモコン操作に対応している。

こちらも詳細は以下関連記事を参照いただきたいが、「製品の根幹である人の言葉がはっきりと聞こえることを維持しつつ、効果音・BGMにも迫力がある、という製品を目指した」というのがコンセプト。

入力端子としてデジタル音声入力(光)が追加されている。今回は手軽さを重視してアナログ音声入力を使用した

入力端子としてデジタル音声入力(光)が追加されている。今回は手軽さを重視してアナログ音声入力を使用した

「ミライスピーカー・ミニ」から「ミライスピーカー・ステレオ」につなぎ替えて「孤独のグルメ」を再生してみると、母から「このゴーっていう音は何?」という発言が。何のことかと一瞬考えたが、街の雑踏や車の通り過ぎる音のことだった。つまり、メーカーの狙いどおり、ちゃんと効果音の再現性が増しているということだろう。

筆者も細かい音が再現されるようになったな、と感じたが、母にも同じだったようだ。声の「聞き取りやすさ」についても損なわれた印象はないそうで、上位機種としての面目躍如といったところ。

ただし、この「ミライスピーカー・ステレオ」は結構大きい。寸法は542(幅)×160(奥行)×87(高さ)mm。高さもそこそこあるうえ、実際の設置で問題になりそうなのは奥行きだ。テレビ台の上にテレビを置き、その前に「ミライスピーカー・ステレオ」を置くとなると結構な余裕が必要になりそう。この点には注意したほうがよいだろう。

奥行きが約36㎝のラックに設置すると、テレビを置くためのスペースはそう広くない。「ミライスピーカー・ステレオ」を検討するならば、テレビの脚の形状、画面の高さも確認することが必須だろう

奥行きが約36㎝のラックに設置すると、テレビを置くためのスペースはそう広くない。「ミライスピーカー・ステレオ」を検討するならば、テレビの脚の形状、画面の高さも確認することが必須だろう

まとめ:「聞き取りやすさ」と使いやすさ最優先ならばプレゼントにもぴったり

今回の検証がすべての「聞こえ」に困っている人に当てはまるとは思わないが、テレビ放送の声の「聞き取りやすさ」を手軽に補助しようと考えた場合、「ミライスピーカー・ミニ」と「ミライスピーカー・ステレオ」はよい候補になりそうだ。

具体的には……

●テレビ番組の「聞き取りやすさ」を最優先する
●トラブル時の対応が難しい
●組み合わせるテレビが比較的安価なモデルである
これらの条件が揃った場合に、ぴったりなのではないかと思う。

ちなみに……プレゼントならばサウンドバーも検討の余地あり

「健聴者」と共用であるなど「聞き取りやすさ」以外の要素を求めるとなると、HDMIケーブル1本でつなげばほぼ“テレビのスピーカー”として使えるARC対応サウンドバーのほうが有力候補になるはず。音楽や映画を楽しむための「音質」はそちらのほうがすぐれているし、(製品によるが)価格も大きくは変わらない。

ARC対応のテレビとサウンドバーをHDMIケーブルで接続すれば、音量調整はテレビのリモコンでできるうえ、電源も連動する。ただし、なぜか音が出ないなどのトラブルがないわけではない。大抵の場合は再起動すれば症状が治まるものではある

ARC対応のテレビとサウンドバーをHDMIケーブルで接続すれば、音量調整はテレビのリモコンでできるうえ、電源も連動する。ただし、なぜか音が出ないなどのトラブルがないわけではない。大抵の場合は再起動すれば症状が治まるものではある

しかし、高齢の方がひとり暮らししている場合など、サウンドバーのトラブル対応が難しいとなれば「ミライスピーカー・ミニ」のシンプルさが役立つ。アナログでケーブルがつながっていること、電源が入っていること、ボリュームが上がっていること、このあたりだけを確認すればよいのだから。

いつでもビデオ通話できるくらいのサポート体制があるならば、一般的なARC対応サウンドバーのほうが満足度は高そうだ。「聞き取りやすさ」についてはサウンドバーのグレードにもよるだろう。

そもそも、オーディオシステムの「音質」が真っ当に上がれば、基本的にはどんな素材でも聞き取りやすくなるはずなのだ。「ミライスピーカー」シリーズが想定している「難聴者」が同じかどうかはわからないが、基本的「音質」の向上は「聞き取りやすさ」にも多少は役立つのではないだろうか。その意味では、「ミライスピーカー・ミニ」をプレゼントに検討するのと同じように、サウンドバーもプレゼントに検討してみてほしいと思う。

そもそも音のよいテレビをプレゼントできれば最高かもしれない……

最後に注意したいのは組み合わせるテレビについて。根本的にテレビの音質がすぐれている場合、「ミライスピーカー・ミニ」を使っても「聞き取りやすさ」の改善が見込めない可能性もあるだろう。

ちなみに(実家ではなく)筆者宅で使っているテレビは、東芝「58Z20X」。2015年発売のそこそこ高級品と言えるもの。実際にこの内蔵スピーカーと「ミライスピーカー・ミニ」の「聞き取りやすさ」を比べると、母いわく「同じような感じ」とのこと。ハイファイオーディオ的帯域バランスとしては「58Z20X」のほうが整っているので、それならば内蔵スピーカーのままで十分。広い部屋のすみずみまで音を届けたい……という場合には検討の余地があるかもしれない。

高齢の親へのプレゼントを検討するならば、そもそも音のよいテレビを選ぶのもよいと思う。もちろん予算が必要になるが、それ以上の使いやすさは後付けの製品では望むべくもない。サウンドバーや音のよいテレビも候補に、それぞれにぴったりのプレゼントを選んでいただければ幸いだ。

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