Xiaomi(シャオミ)がチューナーレステレビを一気に拡充する。「Xiaomi TV S Mini LED 2025」「Xiaomi TV A Pro 2025」「Xiaomi TV A 2025」の3シリーズ9モデルというラインアップで、2024年8月28日より予約販売を開始。すべて解像度は4K(3,840×2,160)で、各シリーズの特徴と価格は以下のとおり。
ハイスペック化と低価格化を同時に実現したXiaomiのテレビ
Xiaomiのテレビと言われてもピンと来ない人も多いだろう。Xiaomiをスマートフォンのメーカーとして認識している人は多そうだが、実は総合家電メーカーであり、世界第5位(※)のテレビメーカーでもある。
※グローバルでの「スマートテレビ出荷台数」(出典:AVC
Revo 2024年第1クオーター)
Xiaomiのスマートフォン日本国内出荷台数は第3位だという(出典:Canalys 2024年第2クオーター)
世界第5位とは、グローバルでの「スマートテレビ出荷台数」のこと。(出典:AVC Revo 2024年第1クオーター)
その家電/テレビ界の巨人が日本にチューナーレステレビ「Xiaomi TV A Pro」シリーズを投入したのが2023年のこと。チューナーレステレビ自体がまだまだこれから、といったところの日本市場でどれほど成功したかはわからない。しかし、その後継機種を発売するだけでなく、Mini LEDバックライトを搭載したハイグレードモデルも揃えてきたのだ。
しかも、「Xiaomi TV A Pro」シリーズの最新版と言える「Xiaomi TV A Pro 2025」シリーズは量子ドット技術を採り入れてスペックアップしたうえ、価格は(55V型で比べると76,780円から64,800円へ)さらに抑えられている。
何より、チューナーレスとはいえ55V型Mini LEDバックライト搭載液晶テレビが10万円を切る価格でリリースされるのだ。このラインアップと価格設定にはXiaomiの本気を感じずにはいられない。
特別なことがないのが特徴
3シリーズともにOSはGoogle TV。シンプルなスティック型のリモコンが付属する
そもそもチューナーレステレビの何がよいかと言えば、機能を省略することで低価格化を果たしていること。そういう出自なので、今回の新製品も特別なことがないのが特徴だ。OSはGoogle TVで、さまざまなアプリをインストール可能。Amazonプライム・ビデオやYouTubeはもちろんのこと、TVerアプリでいわゆるテレビ番組も視聴は可能。チューナーレステレビに求められることはしっかり揃う。なお、スピーカーはすべて本体下に向いたステレオ仕様というありふれた仕様と言える。
「Xiaomi TV S Mini LED 2025」シリーズだけはMini LEDバックライトを搭載した以外にも少し充実した点があるので、以下に整理しておこう。
環境最適化と144Hz対応が特徴の「Xiaomi TV S Mini LED 2025」シリーズ
Mini LEDバックライトと量子ドット技術を採用した「Xiaomi TV S Mini LED 2025」シリーズ。144Hz駆動に対応したこととDolby Atmosのデコードに対応することは下位モデルにない特徴だ。また、HDR信号ではHDR10とHLGのほか、Dolby Vision IQに対応。部屋の環境に応じて最適化されたDolby Visionモードを楽しめる
Mini LEDの分割数は75V型で512、65V型で392、55V型で308。最大輝度はすべて1200nitとのこと。あくまでステレオスピーカーだが、いちおうDolby Atmosのデコードには対応する
Dolby Vision IQに対応できたのは「環境光検知」の機能を持っているから。これも下位モデルにない機能だ。この機能がDolby Vision以外のモードでどの程度効果があるのかは不明だ
低価格で広色域の「Xiaomi TV A Pro 2025」シリーズ
4サイズを揃える「Xiaomi TV A Pro 2025」シリーズは、量子ドット技術を採用しているため「Xiaomi TV S Mini LED 2025」シリーズと同等となるDCI-P3比94%のカバー率を謳う。この点以外は基本的に「Xiaomi TV A 2025」シリーズと同じ。Dolby Vision IQには対応しないが、通常のDolby Visionには対応する
43V型の「Xiaomi TV A Pro 43" 2025」は特に低価格設定に見える。しかも、2024年9月10日までの早割キャンペーンとして29,800円(税込)で販売するとのこと。4Kテレビが“ニーキュッパ”で買えるのだ
低価格志向の「Xiaomi TV A 2025」シリーズ
上記のとおり、「Xiaomi TV A Pro 2025」シリーズから量子ドット技術を省略したのが「Xiaomi TV A 2025」シリーズ。サイズは限定されるものの、とにかく安いチューナーレステレビを検討する人向けと言える
チューナーレステレビの本命になれる可能性を持ったラインアップ
ここまで、Xiaomiの新チューナーレステレビの内容を発表会の様子を交えてお伝えしてきたが、残念ながら会場で画質を見るような環境はなく、正直なところその中身は測りかねている。
Xiaomiがどの程度映像処理や高画質化に意を払っているかは定かではないが、画質に資するハードウェアであるMini LEDバックライトを驚くべき低価格で搭載したことは間違いない。少なくとも、日本市場では盛り上がりに欠けていたチューナーレステレビの本命になれそうな存在が登場したとは言えそうだ。
また、Mini LEDバックライトは搭載しないものの、43V型の「Xiaomi TV A Pro 43" 2025」の値付けにも相当なインパクトがある。大きめだがPCモニターとしても使えそうなこちらにも注目したい。
付録:Xiaomiのテレビを選ぶ前に気を付けたいこと
さて、いまさらながら確認しておくと、Mini LEDバックライトとは、液晶パネルの裏にとても細かいLEDバックライトを敷き詰め、映像に合わせて個別に(エリアごとに)制御するというシステムのこと。映像に応じた光を調節して出すため、一画面内に明るいところと暗いところがある場合でも、しっかり描きわけができるというわけだ。
映像に合わせてリアルタイムでLEDバックライトがエリアごとに動く。これがMini LEDバックライトだ。「Xiaomi TV S Mini LED 75" 2025」のエリア数は512。多いほうではない
元々、LEDバックライトを細かくしてエリアごとに制御するという技術は珍しいものではなかったが、LEDライトがとても細かくなり、ひとつのシステムとして確立されたのがMini LEDバックライトと言えるだろう。
ここで重要なのは、画質のためのハードウェアMini LEDバックライトが比較的簡単に導入できるようにシステム化されていること。液晶テレビにおける画質という付加価値がモジュール的に搭載できるようになったと言い換えることもできそうだ。
たとえば価格.comで人気のハイセンス「U8N」シリーズは、やはりMini LEDバックライトを採用したモデル。大きなメーカーならではのスケールメリットを生かし、安価で販売することで支持を得ている。
もちろん、ハードウェアはそれをうまく使ってこそ製品として生かされるもの。ハイセンスの場合はTVS REGZAと共同開発した映像処理エンジンで高画質化を図っている。ユーザーとしてもTVS REGZA由来の映像処理であれば、という安心感は大きな購入動機になっていることだろう。
ここでXiaomiのテレビはどうだろう。やはりスケールメリットを生かした価格付けは大きなインパクトがある。いっぽうで特別な映像処理を行っているとは言及されていないが、映画再生用の「FILMMAKER MODE」を備えるなど、画質に無頓着というわけではない。
ただし、「オート」や「自動」など、画質を自動調整する機能がないことはユーザーメリットを考えると大きなポイントになると思う。Xiaomiのテレビを検討する場合はこの点を考えておくとよいだろう(「Xiaomi TV S Mini LED 2025」シリーズには「環境光検知」の機能があるものの、どの画質モードで動くかは確認できていない)。いちいち画質モードを変更する習慣のない人は注意していただきたい。
なお、担当者によれば製品の画質は日本向けというわけではなく、中国や韓国と同じ仕様のものが導入されるそうだ。
「Xiaomi TV S Mini LED 2025」シリーズで確認したところ、画質モード(ピクチャーモード)は「標準」「ビビッド」「映画」「スポーツ」「FILMMAKER MODE」の5種類。これを手動で切り替えなければ、高画質志向テレビの本当の画質を楽しめない
2023年モデル「Xiaomi TV A Pro」シリーズの画質を見る限り、新製品の画質も安定していそうではある。特にMini LEDバックライトを搭載した「Xiaomi TV S Mini LED 2025」シリーズは、発表会会場で明らかに他シリーズとは異なるレベルの明るさだった。ただし、それを日常生活の中のテレビとしてどう生かしているかは別問題なのだ。
Xiaomiのテレビも数世代のうちに「AIの技術を使った自動画質調整」などを導入することもありうるだろう。もしそうなれば、Xiaomiは本当の高コスパテレビとして名を上げるかもしれない。
Advertisement